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第32回特定非営利活動法人日本脳腫瘍学会学術集会
会長 藤巻 高光 
埼玉医科大学脳神経外科 教授
 
脳腫瘍の治療成績向上や病態解明のために情熱を傾けている皆様を第32回日本脳腫瘍学会にお迎えすべく、一言ご挨拶申し上げます。

本学会は、あらためて記すまでもないことですが、いまだに難治である悪性脳腫瘍との戦いのわが国での中心的存在です。本学会の前身である第一回の日光脳腫瘍カンファランス以来ずっと参加されておられた東京大学名誉教授 故 佐野圭司 先生は2011年に亡くなられる少し前まで「膠芽腫の治療成績の進歩はあまり速くありませんね」といつもおっしゃっておられました。しかしながら21世紀に入り悪性脳腫瘍の治療成績に目に見える改善が見られてきたのも事実です。テモゾロミドの登場以降、ここ数年の間にベバシズマブ、カルムスチン脳内留置用剤の承認、診断・治療薬としての蛍光色素と保険診療のみを見ても多くの手段が私達に与えられました。基礎研究の面でも、全ゲノム解析、次世代シークエンサーの登場、エピジェネティクス研究の進展など in vitro 研究からマウスでの実験、ヒトの腫瘍の解析と腫瘍の成り立ちについての多くの知見が集積され、また臨床情報と基礎研究の知識が結合してきつつあります。

まさに脳腫瘍が見えてきた時代であるといえます。日本からの登録も含めた国際大規模臨床試験の結果が発表され、また国内でも多施設共同試験で得られた知見が積み重ねられようとしています。いままで詳細のわからなかった悪性脳腫瘍というものが、少しずつ見えてくる時代であるといえるのではないでしょうか?

しかし多くの情報が得られることがかえってものを見えにくくする場合もあると思います。この大きな変革の時にあたって、いままで見えてきたことを整理しまとめ、さらにはこれからどのような事を見ていかなければならないのかを討議する学会にできればと考えております。

舞浜は東京都心近くで交通の便が良いながら、本学会の伝統である隔絶した環境で話し合いの場が持てるという場所として選ばせていただきました。学会中は是非会議に集中いただきたいのですが、学会の前後には近くのリゾートでご家族との時を過ごしていただくことも可能と存じます。個人的な事になりますが、観光大使をつとめております長野県大町市(信濃大町)の美味しいものも大町市の協力で学会の合間に味わって頂ける準備をしております。

埼玉医科大学のスタッフ一同、皆様に学問の上でも、また日本中の同志との交流の時という意味でも良いときを過ごしていただけるよう精一杯努力する所存です。

訪れる人々にマジックをかける舞浜の地での三日間の学会が、皆様にとって有意義なものとなり脳腫瘍治療の進歩にマジックをもたらすことを祈りつつ、皆様のご参加をお待ちいたしております。 舞浜でお目にかかりましょう。